結論:「Claude Codeにもっと深く考えさせたい」と思ったら、まず触るべきは think 系の呪文ではなく 効力(effort)レベルです。2026年6月時点の公式仕様では、think / think hard / think more は「ただのプロンプト文字列」として扱われ、キーワードとしては認識されません。深さを上げる正規の方法は /effort による effort レベルの調整(low〜max)で、その場限りで一段深く考えさせたいときだけ ultrathink を文中に入れます。
- 要点1: 拡張思考(extended thinking)はデフォルトで有効。Opus 4.7 以降は「適応的推論(adaptive reasoning)」で、ステップごとに考える量をモデルが自分で配分する。
- 要点2: 深さの主役は
/effort。Opus 4.8 はlow / medium / high / xhigh / maxの5段階で、デフォルトはhigh。難問はxhigh〜max。 - 要点3: Plan Mode は「考える深さ」ではなく「実装前にレビューする工程」。effort(深さ)と Plan Mode(手順)は別軸なので併用が効く。
対象読者:複雑なバグ・アーキ設計・トレードオフ検討でClaude Codeにもっと深く考えてほしい開発者。今日やること:/effort を一度開いて現在のレベルを確認し、難問のときだけ一段上げる癖をつける。
正直に言うと、僕も少し前まで「難しい問題のときは ultrathink って書けば最強、その下に think hard があって…」という階層モデルで理解していました。100社以上のClaude Code導入支援をしている中でも、この「呪文の階段」を信じている開発者は本当に多い。ところが2026年に入ってこの仕組みは大きく作り替えられていて、いま think hard と書いても何も起きません。この記事では、2026年6月時点の公式ドキュメントで裏取りした「いまの正しい深く考えさせ方」を、現場の使い分け込みで整理します。

拡張思考(extended thinking)とは|回答前に「考える時間」を増やす仕組み
拡張思考とは、Claudeが回答を出す前に内部で推論(thinking)を生成し、選択肢を比較したり、エッジケースを洗い出したりする処理のことです。公式の表現では「Extended thinking is the reasoning Claude emits before responding(拡張思考は応答前にClaudeが出す推論である)」とされています。チャットでいきなり答えるのではなく、いったん腰を据えて考えてから手を動かす、というイメージです。
重要なのは、拡張思考はデフォルトで有効だという点。公式の「Manage costs」ページにはこうあります。「Extended thinking is enabled by default because it significantly improves performance on complex planning and reasoning tasks(複雑な計画・推論タスクの性能を大きく改善するため、拡張思考はデフォルトで有効)」。つまり、特別な操作をしなくても、Claude Codeは難しいタスクで自動的にある程度は深く考えています。
そして思考の量は、課金に直結します。「Thinking tokens are billed as output tokens(思考トークンは出力トークンとして課金される)」「You are charged for all thinking tokens generated, even when collapsed or redacted(折りたたまれていても、生成された思考トークンはすべて課金対象)」。深く考えさせる=トークンとレイテンシ(応答までの時間)が増える、というトレードオフがここにあります。後半でこの使い分けを詳しく扱います。
2026年の変化|「think → think hard → ultrathink」の階段はもう無い
ここが本記事の核心です。かつてClaude Codeには think < think hard < think harder < ultrathink と、書く言葉によって思考予算(thinking budget)が段階的に増える「キーワードの階段」がありました。多くの解説記事がいまもこの図式で書いていますが、2026年6月時点ではこの階段は廃止されています。
公式の Model configuration ページには、はっきりこう書かれています。
Other phrases such as "think", "think hard", and "think more"
are passed through as ordinary prompt text and are not
recognized as keywords.
("think"、"think hard"、"think more" などのフレーズは
通常のプロンプト文字列としてそのまま渡され、
キーワードとしては認識されない)
つまり、いま think hard と打っても、思考予算が増える特別な作用は何もありません。ただの依頼文の一部として処理されるだけです。「呪文を強くすれば深くなる」という発想は、2026年時点では正しくない、と理解し直す必要があります。
ではどうやって深さを制御するのか。答えは次章の 効力(effort)システムです。なお、深さの主役が effort に移った一方で、ultrathink という単語だけは「その場限りのスイッチ」として生き残っています(これも後述)。本サイトの内部運用や設定の考え方は Claude Codeのコスト最適化ガイド と合わせて読むと、トークン視点での理解が深まります。
深く考えさせる正規の方法|効力(effort)レベルと /effort コマンド
2026年現在、Claude Codeで「考える深さ」を制御する主たる仕組みが 効力(effort)レベルです。公式の定義は「Effort levels control adaptive reasoning, which lets the model decide whether and how much to think on each step based on task complexity(効力レベルは適応的推論を制御し、タスクの複雑さに応じてモデルがステップごとに考えるかどうか・どれだけ考えるかを決める)」。低くすれば速く安く、高くすれば深く考える、というシンプルな軸です。
モデル別の効力レベル(2026年6月時点)
利用できる effort レベルはモデルによって異なります。公式の一覧は以下のとおりです。
Opus 4.8 / Opus 4.7 : low, medium, high, xhigh, max
Opus 4.6 / Sonnet 4.6 : low, medium, high, max
デフォルト効力:
Opus 4.8 = high
Opus 4.7 = xhigh
Opus 4.6 / Sonnet 4.6 = high
サポートしていないレベルを指定すると、「Claude Code falls back to the highest supported level at or below the one you set(指定値以下で対応している最高レベルにフォールバックする)」。たとえば Opus 4.6 で xhigh を指定すると high として動きます。各レベルの使いどころは公式が以下のように示しています。
low : 短くスコープが狭く、知性より速度が大事なタスク
medium : 多少の知性を犠牲にしてコストを下げたいタスク
high : トークンと知性のバランス(Opus 4.8 のデフォルト)
xhigh : より深い推論。トークン消費は増える(Opus 4.7 のデフォルト)
max : 最も深い。要求の高いタスクで効くが、
「考えすぎ(overthinking)」になりやすく逓減もある
effort レベルの設定手順
セッション中に深さを変える基本手順は次のとおりです。
- 難しいバグ・設計に入る前に、まず
/effortを引数なしで実行し、現在のレベルを確認する(ロゴやスピナーの横に「with high effort」のように現在値が表示される)。 - 難問なら
/effort xhighのようにレベル名を直接指定して一段上げる。/effort autoでモデルのデフォルトに戻せる。 - そのタスクが終わって通常作業に戻ったら、
/effort high等で元に戻すか/effort autoでリセットする(高いままだと無駄にトークンを食う)。 - 常用したい場合は
/model選択時の左右キーでスライダー調整、または起動時--effortフラグ、環境変数CLAUDE_CODE_EFFORT_LEVEL、設定ファイルのeffortLevelで固定する。
注意点として、low / medium / high / xhigh はセッションをまたいで永続化されますが、max は「the current session only(現在のセッションのみ)」で、トークン消費に上限を設けない最深モードです。環境変数の優先度が最も高く、次に設定値、最後にモデルのデフォルト、という順で効きます。
ultrathink・ultracode の現在地|「その場限りの深掘り」スイッチ
「じゃあ ultrathink も死んだの?」と思うかもしれませんが、ここは少し違います。ultrathink という単語だけは、その回(ターン)限定で深く考えさせるスイッチとして現役です。公式の記述を引用します。
Include "ultrathink" anywhere in your prompt to request
deeper reasoning on that turn without changing your session
effort setting. Claude Code recognizes the keyword and adds
an in-context instruction. The effort level sent to the API
is unchanged.
(プロンプトのどこかに "ultrathink" を入れると、
セッションの effort 設定を変えずに、そのターンだけ
深い推論を要求できる。Claude Code はこのキーワードを
認識して文脈内の指示を追加する。
APIに送られる effort レベルは変わらない)
つまり ultrathink は「effort を恒久的に上げずに、いまの一手だけ踏ん張らせる」ための軽いスイッチに役割が変わりました。think hard 等が無効化されたのと対照的に、ultrathink だけは特別扱いで残っている、という非対称があります。
さらに上位に ultracode があります。これは effort レベルではなく Claude Code の設定で、「sends xhigh to the model and additionally has Claude orchestrate dynamic workflows for substantive tasks(モデルには xhigh を送り、加えて実体のあるタスクでは動的ワークフローを編成させる)」もの。大きなタスクを計画し、複数のサブエージェントを使って自分で検証まで回す、最上位の構えです。ultracode もセッション限定で、/effort から設定します。大規模コードベースの読解・オンボーディングのような重い探索タスクでは、大規模コードベースを理解するガイド のやり方と組み合わせると相性が良いです。
使いどころ|どんな問題で深く考えさせるべきか
effort を上げる価値が高いのは、「答えが一意に決まらず、選択肢の比較が要る」場面です。逆にタイプミス修正やログ追加のような小さな変更で max を使うのは、公式も警告する「overthinking(考えすぎ)」の典型で、無駄にトークンとレイテンシを食います。現場での目安はこうです。
# effort を上げる価値が高い(xhigh〜max 候補)
- 再現条件が不安定なバグの原因切り分け
- 複数モジュールにまたがる設計・リファクタの方針決め
- ライブラリ選定や同期/非同期などのトレードオフ検討
- 「なぜこの実装がダメなのか」の根本原因分析
# effort はデフォルト(high)以下で十分
- 変数リネーム、ログ1行追加、import 整理
- 既存パターンに沿った定型的な実装
- 仕様が明確で「diffが1文で説明できる」変更
公式 Best practices も「If you could describe the diff in one sentence, skip the plan(diffを一文で説明できるなら計画は飛ばせ)」と書いており、これは effort の判断にもそのまま使えます。深さは「迷いの大きさ」に比例させるのが、トークンとのバランスが取れる考え方です。
Plan Mode との違いと併用|「深さ」と「手順」は別軸
よく混同されるのが Plan Mode と拡張思考です。両者はそもそも軸が違います。
拡張思考 / effort … 「1回の応答でどれだけ深く考えるか」(深さの軸)
Plan Mode … 「実装前に計画を提示してレビューする工程」(手順の軸)
Plan Mode は公式の説明どおり「Claude reads files and proposes a plan but makes no edits until you approve(Claudeはファイルを読んで計画を提案するが、承認するまで編集はしない)」もので、ディスクに触る前に方向性を確認するための仕組みです。深く考えるかどうかとは独立しています。
だからこそ併用が効きます。難しいアーキ変更なら、effort を上げて深く考えさせつつ、Plan Mode で計画をレビューしてから実装に入るのが王道。実際 opusplan という別名は「In plan mode は opus、実行時は sonnet に自動切替」する仕組みで、計画フェーズに強いモデル+深い推論を当てる発想が公式にも組み込まれています。Plan Mode 単体の使い方は Claude Code Plan Mode実践ガイド で詳しく解説しています。
考えすぎ・コスト増のトレードオフと使い分け
深く考えさせることには確実にコストが伴います。整理しておきます。
- トークン課金が増える:思考トークンは出力トークンとして課金。effort を上げるほど思考量が増え、その分だけ請求が増える(公式の默認 budget は「tens of thousands of tokens per request」になりうる、と明記)。
- レイテンシが増える:考える時間が長くなるぶん、応答までの待ち時間も伸びる。フルスクリーンでは「Thinking for Ns」が刻々と増えるのが見える。
- 逓減と考えすぎ:
maxは「may show diminishing returns and is prone to overthinking(逓減が出やすく、考えすぎになりやすい)。Test before adopting broadly(広く採用する前にテストせよ)」と公式が釘を刺している。
コストを抑えたいときの公式の手も具体的です。「lowering the effort level with /effort」「disabling thinking in /config」「lowering the budget with MAX_THINKING_TOKENS=8000」。さらに MAX_THINKING_TOKENS=0 で effort に関わらず思考を切ることもできます。要は「全部のタスクで深く考えさせない」。難問だけ深さを上げ、終わったら戻す。この一手間が、品質とコストの両立に効きます。
実務での使い分けフロー
- まず default(多くの環境で
high)のまま着手する。Claude Codeは難所では適応的に考える。 - 「答えが浅い」「選択肢を比較できていない」と感じたら、その一手だけ
ultrathinkを文中に入れて様子を見る。 - セッション全体が難問なら
/effort xhighに上げる。大規模かつ自己検証まで回したいなら/effort ultracode。 - 方針が固まり、定型実装フェーズに入ったら
/effort highや/effort autoに戻してコストを締める。 - コストが気になるバッチ処理は
mediumやMAX_THINKING_TOKENSを下げる、で速度寄りに振る。
よくある誤解と最新仕様の確認方法
最後に、情報の鮮度について一言。Claude Code はバージョン更新が速く、effort レベルやキーワードの挙動も変わります。実際、過去には ultrathink が一度「廃止された」と告知された経緯もあり、ネット上には古い情報と新しい情報が混在しています。本記事は2026年6月時点の公式 Model configuration / Manage costs ドキュメントを一次情報として書いていますが、運用前には必ず自分の環境で次を確認してください。
claude --versionでバージョンを確認する(Opus 4.8 は v2.1.154 以降が必要)。/effortを開き、自分のモデルで選べるレベルと現在値を実機で見る。- 挙動が記事と違う場合は、公式の Model configuration と changelog で最新仕様を確認する(「公式docsで最新仕様を確認」が常に正解)。
「呪文の強さ」ではなく「effort という1本のダイヤル」で深さを管理する。これが2026年のClaude Codeで難問に深く考えさせる、いちばん確実なやり方です。
まとめ
難しいバグや設計でClaude Codeに深く考えさせたいとき、いま触るべきは think hard ではなく /effort です。拡張思考はデフォルトで有効、深さは effort レベル(low〜max、Opus 4.8 は high 既定)で制御し、その場限りの深掘りには ultrathink、最上位の構えには ultracode。Plan Mode は深さではなく手順の軸なので併用が効きます。深く考えさせるほどトークンとレイテンシが増えるので、難問だけ上げて終わったら戻す——この使い分けが品質とコストを両立させます。
参考・出典
- Model configuration|Claude Code 公式ドキュメント(effortレベル・ultrathink・extended thinkingの仕様)
- Manage costs effectively|Claude Code 公式ドキュメント(拡張思考のデフォルト有効・思考トークン課金・MAX_THINKING_TOKENS)
- Best practices for Claude Code|Claude Code 公式ドキュメント(探索→計画→実装、Plan Modeの使いどころ)
- Permission modes|Claude Code 公式ドキュメント(Plan Modeの動作)
- Introducing Claude Opus 4.8|Anthropic 公式(効力レベルとデフォルトhigh)