教育

保育園・こども園のClaude Code活用事例|おたより・書類作成を効率化

保育園・こども園の事務をClaude Codeで効率化する実践事例。園だより・月案週案の下書き、保護者連絡文、行事案内、申請書類の整形を、子どもの個人情報を守る運用設計つきで解説します。

保育園・こども園のClaude Code活用事例|おたより・書類作成を効率化

結論:保育園・認定こども園の事務作業のうち、園だより・クラスだよりの下書き、月案・週案・日案の文章整形、保護者への一斉連絡文や行事案内の作成は、Claude Code を「文章の下ごしらえ係」として使うことで、職員が確認・修正に集中できる形に変えられます。

  • 効くのは「文章の下書き」と「整形」 — おたより・連絡文・行事案内・指導計画の文案を、園が決めた書式に沿って一気に下書きさせる使い方が中心です。最終的な内容判断と発信は保育士・職員が行います。
  • 園のルールを CLAUDE.md に書いておくと毎回ブレない — 行事名の表記、禁止表現、保護者への呼びかけ方を1つのファイルにまとめておくと、誰が使っても同じトーンの下書きが出ます。
  • 子どもの個人情報は入れない運用が大前提 — 実名・住所・写真・連絡先・発達に関する個別記録は AI に渡さない設計を最初に決めます(後半で独立して解説)。

対象読者:保育園・認定こども園の園長/主任保育士/事務職員で、「おたよりや書類づくりに時間が取られすぎている」「ICT 化を考えているがどこから手を付けるか迷っている」という方。

今日やること:まずは「来月の園だよりの“季節のあいさつ文”だけ」を、子どもの名前を一切入れずに Claude Code に下書きさせてみる。それだけで使いどころの感覚がつかめます。

本記事は、保育・幼児教育の現場でよくある事務負担を題材にした想定シナリオ(モデルケース)として、Claude Code をどう組み込めるかを解説します。登場する園・職員・数値は実在の特定園のものではなく、複数の現場で語られる課題を一般化したものです。実際に効果が出るかどうかは園の体制や運用次第であり、「必ず時間が半分になる」といった保証をするものではありません。

なぜ保育の現場で「書類の下書き」が重荷になっているのか

保育士の仕事の中心は、当然ながら子どもと向き合う保育そのものです。ところが現場の声を聞くと、保育以外の事務作業――とくに「文章を書く仕事」――が、勤務時間外や休憩時間に食い込んでいるという話が繰り返し出てきます。

具体的には、次のような文章作成が毎月・毎週のように発生します。

  • 園だより・クラスだより:季節のあいさつ、今月のねらい、行事のお知らせ、保健・給食コーナーなど、書く要素が多い
  • 指導計画(月案・週案・日案):ねらい・養護・教育・環境構成・配慮事項などを、所定の様式に落とし込む
  • 保護者への一斉連絡・行事案内:運動会、発表会、保育参観、面談のお知らせ、持ち物連絡、悪天候時の対応連絡
  • 各種申請・報告書類の下書き:自治体への提出書類、補助金・助成金の申請文、研修報告など
  • 問い合わせ・要望への返信文:保護者からの相談や苦情に対する、丁寧で誤解のない文面づくり

これらは一つひとつは難しくなくても、「ゼロから文章を起こす」ところに時間がかかります。とくに、毎回同じような構成・同じようなトーンで書き直す作業は、定型化しやすい一方で、職員ごとに表現がバラついたり、ベテラン以外は時間がかかったりしがちです。ここが、AI に「下書き」を任せる余地が大きい部分です。

Claude Code でできること・できないことを最初に切り分ける

Claude Code は、Anthropic が提供するコマンドライン型の AI ツールです。もともとはエンジニアがコードを書くために使うツールですが、本質は「自然言語で指示すると、ファイルを読んだり、文章を作ったり、書き換えたりしてくれる作業アシスタント」です。保育の事務でも、この「文章の読み書き」の部分が役に立ちます。

大事なのは、最初に役割をはっきり分けることです。

区分 Claude Code に任せやすいこと 必ず人(保育士・職員)が担うこと
おたより 季節のあいさつ文・行事告知の文案・読みやすい言い回しへの整形 掲載する事実の確認、子どもに関する記述の可否判断、最終的な発信
指導計画 所定の様式に沿った文章の体裁づくり・表現のゆれの統一 ねらいの設定、子どもの発達状況の評価、保育の専門的判断
保護者連絡 連絡文・案内文のたたき台、持ち物リストの箇条書き化 個別事情への配慮、送信の最終判断
申請・報告 提出様式に合わせた文章の下書き、要点の整理 事実関係・数値の正確性、提出可否の判断

とくに「保育の質や子どもの発達評価そのものを AI が判断する」使い方はしません。指導計画の「ねらい」や、子ども一人ひとりへの配慮は、保育士の観察と専門性があってはじめて決まるものです。Claude Code が手伝うのは、決まった内容を「読みやすい文章の形に整える」ところまで、と線を引いておくのが安全です。

導入前の状況と、最初に整える準備

モデルケースとして、定員90名・職員18名規模の認定こども園を想定します。導入前は、おたよりも指導計画も Word・Excel で各担任が個別に作成し、過去の文書を「コピーして書き換える」方式でした。そのため、行事名の表記ゆれ(「運動会」「うんどうかい」「スポーツデー」)や、保護者への呼びかけ方の不統一が起きていました。

Claude Code を使う前に整えたのは、次の3つです。

  1. 作業用フォルダを1つ用意する — おたよりや連絡文の文案を置くための専用フォルダを作り、その中で Claude Code を起動します。園児の個別記録ファイルは、このフォルダには置きません。
  2. 園のルールを書いた CLAUDE.md を置く — Claude Code は、作業フォルダに CLAUDE.md という名前のファイルを置いておくと、起動時に自動で読み込みます。ここに「園の前提・ルール」を書いておくと、毎回指示しなくても、それを踏まえた下書きを出してくれます。
  3. よく使う依頼を「スラッシュコマンド」にする — 毎回同じような依頼(例:園だよりの下書き)は、定型文をファイルに保存しておくと /コマンド名 の一言で呼び出せます。

園のルールを CLAUDE.md にまとめる例

たとえば、次のような内容を CLAUDE.md に書いておきます(あくまで文章表記のルールであり、子どもの個別情報は書きません)。

# この園のおたより・連絡文ルール

## 基本トーン
- 保護者には「保護者の皆さま」と呼びかける
- 丁寧だが、かたすぎない・読みやすい文章にする
- 1文は短めに。専門用語には簡単な言いかえを添える

## 表記の統一
- 行事名は「運動会」「生活発表会」「保育参観」で統一する
- 子どもの呼び方は「お子さま」で統一する

## やってはいけないこと(重要)
- 特定の子どもの実名・写真・住所・連絡先・発達の記録は文章に入れない
- 個別の事情に関わる内容は、必ず職員が直接書く
- 提出書類の数値や日付は、AIの出力をそのまま使わず人が確認する

このファイルがあると、職員が「来月の園だよりのあいさつ文を作って」と頼むだけで、園のトーンと表記ルールに沿った下書きが出てきます。新しく入った職員でも、同じ品質の下書きから始められるのが利点です。

実際の使い方:4つの場面で「下書き→確認→修正」を回す

ここからは、Claude Code を実際に起動して使う流れを、場面ごとに紹介します。コマンドは作業フォルダの中で claude と打って起動し、あとは日本語で依頼するだけです。なお Claude Code は、ファイルを新しく作ったり書き換えたりする前に確認を求める設計になっているので、勝手にファイルが上書きされる心配はありません。

場面1:園だより・クラスだよりのあいさつ文と告知

季節のあいさつ文や行事の告知は、毎月のように発生する定番の作業です。次のように、条件を具体的に伝えて下書きさせます。

6月の園だより冒頭の「季節のあいさつ文」を、保護者向けに3案つくってください。

条件:
- 各案 120〜150字程度
- 梅雨の時期の自然や、子どもが室内で楽しむ様子に触れる
- 特定の子どもの名前や個別のエピソードは入れない
- CLAUDE.md の基本トーンと表記ルールに従う

仮定した点があれば「仮定」と明記してください。

3案出してもらい、その中から園の雰囲気に合うものを選んで職員が手直しします。「ゼロから書く」より、「選んで直す」ほうが心理的な負担が軽く、書き出しで手が止まる時間がなくなるのが大きい、という声につながりやすい部分です。

場面2:保護者への一斉連絡・行事案内

運動会や発表会の案内は、日時・場所・持ち物・注意事項といった「決まった要素」を、漏れなく読みやすく並べる必要があります。要素をこちらで渡し、整形を任せます。

運動会の保護者向け案内文を作ってください。以下の要素を、読みやすく整理してください。

- 日時:10月10日(土)9:30〜12:00(雨天時は翌週へ順延)
- 場所:園庭(駐車場はありません。徒歩か公共交通でお願いします)
- 持ち物:水筒、タオル、帽子
- お願い:写真撮影は指定エリアのみ。SNSへの掲載は控えてください

条件:
- 持ち物とお願いは箇条書きにする
- 最後に問い合わせ先(園の事務室)への一文を添える
- 個別の子どもの情報は含めない

出てきた案内文は、日時や場所などの事実部分を職員が必ず指差し確認してから配布します。AI は文章の体裁を整えるのは得意ですが、日付や時間の正確さの最終責任は人にあります。

場面3:指導計画(月案・週案)の文章整形

指導計画でいちばん時間がかかるのは、頭の中にある「ねらい」や「配慮」を、所定の様式の文章に落とし込む作業です。ここでも、ねらいや配慮の中身は保育士が決め、Claude Code には「決めた内容を様式の文章に整える」役割だけを任せます。

5歳児クラス・6月の月案の文章を整えてください。
以下のメモを、月案の様式(ねらい/養護/教育/環境構成/配慮事項)に沿った文章にしてください。

メモ:
- ねらい:友だちと協力して遊ぶ楽しさを感じる。梅雨の自然に関心を持つ
- 環境:雨の日も体を動かせる室内コーナーを用意する
- 配慮:一人遊びが続く子には、無理に誘わず様子を見ながら声をかける

条件:
- メモにない子どもの発達評価や個別の所見は、勝手に追加しない
- 足りない観点があれば、こちらに質問してください

ポイントは「メモにないことを勝手に書かせない」と明記することです。AI は文章を“それらしく”埋めてしまう性質があるため、想像で配慮事項を増やされると保育の実態とずれます。出力はあくまで下書きとして、担任が自分の観察に基づいて修正します。

場面4:問い合わせ・要望への返信文のたたき台

保護者からの相談や要望への返信は、言葉選びを誤ると関係に響くため、慎重さが求められる文章です。とはいえ、毎回ゼロから丁寧な文面を考えるのは負担が大きい。そこで、状況の要点だけを(個人が特定されない形で)渡して、たたき台を作らせます。

保護者から「お迎えの時間に間に合わないことがあり、延長保育の申し込み方法を知りたい」という
お問い合わせがありました。ていねいな返信文のたたき台を作ってください。

条件:
- 申し込み方法の案内は「(園の手続きをここに記載)」とプレースホルダーにしておく
- 個別の事情を決めつけず、まず相談を受け止める一文から始める
- 最後に、面談や電話でも相談できることを添える

返信文は必ず職員が読み返し、園の実際の手続きや、その保護者の状況に合わせて仕上げます。苦情対応のような繊細な文章こそ、AI の下書きは「土台」にとどめ、判断と最終文面は人が握るのが鉄則です。

【最重要】子ども・保護者の個人情報を守る運用設計

保育の現場で AI を使うとき、いちばん先に決めなければならないのが個人情報の扱いです。子どもの情報は特に慎重に扱う必要があり、ここを曖昧にしたまま便利さだけを追うと、取り返しのつかないトラブルにつながりかねません。次のルールを、使い始める前に園内で共有してください。

  • 子どもの実名・写真・住所・連絡先・家庭状況は AI に入力しない — おたよりや連絡文の下書きでは、固有名詞は「お子さま」「年長クラス」などの一般的な表現に置き換えます。どうしても個別の内容が必要な箇所は、職員が直接書きます。
  • 発達や健康に関する個別記録は AI に渡さない — 個々の子どもの発達評価・健康情報・気になる様子の記録は、Claude Code を使う作業フォルダには置かず、入力もしません。指導計画でも、扱うのは「クラス全体のねらい・環境構成」までにとどめます。
  • 個人が特定できる形の問い合わせ内容を、そのまま貼り付けない — 返信文のたたき台を作るときは、名前や具体的な事情を一般化し、「延長保育の申し込み方法を知りたい保護者」のように要点だけを渡します。
  • 園として AI の利用範囲をルール化し、職員に周知する — 「何を入れてよくて、何は絶対に入れないか」を文書にし、新任職員にも共有します。判断に迷う情報は「入れない」を原則にします。
  • 自治体・所属法人の規程や、個人情報の取り扱い方針を必ず確認する — 保育施設には、自治体や運営法人ごとに情報の取り扱いルールがあります。AI ツールの業務利用が可能か、どこまで許されるかは、導入前に必ず確認し、最新の規程に従ってください。本記事は一般的な考え方を示すものであり、各園の規程に優先するものではありません。

逆に言えば、「子どもの個別情報を入れない範囲」でも、おたよりの文案づくり・連絡文の整形・様式に沿った文章化といった事務作業の多くはカバーできます。便利さと安全の両立は、入力する情報を最初から絞り込むことで実現できます。

段階的に広げるロードマップ

いきなり全部の書類に使おうとすると、かえって現場が混乱します。小さく始めて、効果を確かめながら広げるのがおすすめです。

Phase 1(1〜2か月):おたよりのあいさつ文だけ。いちばん定型的で、個人情報を含めずに済む「季節のあいさつ文・行事告知」から始めます。職員が「下書きを直す」感覚に慣れることが目的です。

Phase 2(3〜4か月):保護者連絡・行事案内へ拡大。要素を渡して整形させる使い方を、一斉連絡や案内文に広げます。同時に、園のルールを書いた CLAUDE.md を実際の運用に合わせて育てていきます。

Phase 3(5か月以降):指導計画の整形と申請書類の下書き。保育士の専門的判断が前提となる指導計画の「文章整形」や、申請・報告書類の下書きに広げます。この段階でも、内容の妥当性チェックと最終判断は必ず人が行います。

よくある失敗パターンと回避策

失敗1:あいまいな指示で「ふわっとした文章」が出てくる

❌「いい感じのおたよりを書いて」
⭕「6月の園だよりの季節あいさつ文を、120字で、梅雨の室内遊びに触れて3案」

なぜ重要か:AI は「いい感じ」の基準を持っていません。文字数・テーマ・トーン・案の数まで具体的に指定するほど、修正の手間が減ります。

失敗2:AI の出力を確認せずそのまま配布・提出してしまう

❌ 行事の日時や持ち物を、AI が書いたまま配布する
⭕ 日付・時間・場所・数値は、職員が元情報と必ず突き合わせる

なぜ重要か:AI は文章を整えるのは得意でも、事実の正確さは保証しません。とくに保護者に配る連絡や提出書類は、人による事実確認が必須です。

失敗3:便利だからと、子どもの個別情報まで入力してしまう

❌「○○くんは最近こういう様子で…」と実名・状況を貼り付ける
⭕ 一般化して「年長クラスで一人遊びが続く子への配慮」のように渡す

なぜ重要か:子どもの情報は最も慎重に扱うべきものです。便利さに引っ張られて個人情報を入力してしまうのが、いちばん起こりやすく、いちばん危険な失敗です。入力前に「これは個人が特定できないか?」を必ず確認します。

まとめ:保育士の時間を「子どもと向き合う時間」に戻すために

Claude Code は、保育の専門性を肩代わりするものではありません。ねらいを定め、子どもを見取り、保護者と向き合う仕事は、これまで通り保育士のものです。AI が引き受けられるのは、その手前にある「文章の下ごしらえ」――おたよりの文案、連絡文の整形、様式に沿った文章化といった、定型的で時間のかかる事務作業です。

今日からできる第一歩は、ごく小さくて構いません。来月の園だよりの「季節のあいさつ文」を、子どもの名前を一切入れずに、3案だけ下書きさせてみる。出てきた文章を読んで「ここを直せば使えそう」と感じられたら、その感覚こそが、現場に合った使い方を見つける出発点になります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. パソコンが苦手な保育士でも使えますか?

Claude Code はコマンドライン型のツールなので、最初の準備(インストールや作業フォルダの設定)には少し慣れが必要です。ただし、いったん準備が整えば、あとは作業フォルダで起動して日本語で依頼するだけです。準備の部分は、ICT に詳しい職員や外部の支援を頼り、現場の職員は「依頼して直す」だけに専念する分担がおすすめです。

Q2. 子どもの名前や写真を入れても大丈夫ですか?

入れないでください。子どもの実名・写真・住所・連絡先・発達の個別記録などは AI に入力しない、という前提で運用します。おたよりや連絡文は、固有名詞を一般的な表現に置き換えれば、個人情報を入れなくても十分に下書きできます。導入前に、自治体や運営法人の個人情報の取り扱い規程を必ず確認してください。

Q3. 指導計画のねらいも AI に決めてもらえますか?

ねらいの設定や子どもの発達評価は、保育士が観察にもとづいて判断する専門領域です。AI には任せません。Claude Code が手伝えるのは、保育士が決めた「ねらい」や「環境構成」を、所定の様式に沿った読みやすい文章に整えるところまでです。

Q4. 出てきた文章をそのまま配ってもいいですか?

そのまま配るのは避けてください。とくに行事の日時・場所・持ち物・提出書類の数値や日付など、事実にあたる部分は、職員が元の情報と突き合わせて確認してから発信します。AI は文章を整えますが、事実の正確さの最終責任は人にあります。

Q5. 「必ず業務時間が短くなる」と考えてよいですか?

いいえ。効果は園の体制・運用の仕方・どこまで使うかによって変わります。本記事は想定シナリオであり、特定の削減率を保証するものではありません。まずは小さな範囲で試し、自園に合うかどうかを確かめることをおすすめします。


著者プロフィール

佐藤傑(さとう・すぐる)。株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、X(旧Twitter、@SuguruKun_ai、フォロワー約10万人)で活用法を発信。100社以上の企業・団体向けにAI研修・導入支援を展開。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。


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